【小話】メアリースミスの痛みの塔


「本当は”そう”なる前に助けてあげたかったんだけど、私が見つけた時にはすでに、
  君の心は私の声の届かない所にまで行ってしまっていたのでね」

「これに記載されている通り、君は現世への恨みと愛情への執着が強すぎたので、
  死後怪異化し世界の脅威となってしまう前に、死神種としての転生願いを私が提出したのさ」

「ああそれと、君を……いや君が世話した両親は私が黄泉先へと送ったから、もうこの世にいないよ。
  君が死んだ時点で、あれらの魂に蓄積された悪業が善業で清算できる量を超過したのでね」

「”メアリー・スー” それが君に与えられた新しい名前だ。その名に相応しい能力も授けられている」
  真名の方はむやみやたらと口にしないように。君という存在を確立する大切なものだ」

 

故メアリー・スミス。享年19歳。
死因――投身自殺

 

”メアリースミスの痛みの塔”

 

どんどん強く もっと強く 唄声響く痛みの塔
そのてっぺんにしがみついて 震えてるのはどちら様

 


捨てたくても捨てられなくて

小さな痛み溜まってた

そいつをずっとしまってきた
一個目の箱 満たされた


別に今更 辛くもないけど

誰かが見てくれたらな

これだけあれば許されないかな
少し優しくされるくらい

 


捨てたものも拾って詰めて

満タンの箱積み上げた

通りすがりを横目に見て
十個目の箱積み上げた

そうか これでもまだ足りないのか
誰にも見えてないようだ

それじゃどんどん高くしなくちゃ
世界中にも見えるくらい

 


どんどん高く もっと高く 鳥にも届く痛みの塔

そのてっぺんに よじ登って 王様気分の何様

 


何事かと大口開けた
野次馬共を見下ろした

ここから見たら蟻のようだ
百個目の箱積み上げた

 


お集まりの皆様方
これは私の痛みです

あなた方の慰めなど
届かぬほどの高さに居ます



きっと私は特別なんだ

誰もが見上げるくらいに

孤独の神に選ばれたから
こんな景色の中に来た――

 


どんどん高く もっと高く 雲にも届け痛みの塔

そのてっぺんに あぐらかいて 神様気分の王様

~End~

引用 : BUMP OF CHICKEN 「ハンマーソングと痛みの塔」より
https://www.youtube.com/watch?v=7kraPTlBKB0

 

あとがき

うちのキャラ、メアリー・スーの設定語りをかねた生前の小話でした。
メアリーはBUMPの楽曲のいくつかを聞いている時に生まれたキャラなのですが、このハンマーソングと痛みの塔という曲はそれのひとつです。
Orbital periodというかなり前のアルバムの収録曲で、私の大好きな曲でもあります。

本来は、痛みの塔のてっぺんにいる孤独の王様を、周りの人が「みんなアンタと話したいんだ。同じ高さまで降りてきて」と
ハンマーソングを歌いながら塔=積み上げられた箱を1段1段弾き飛ばしていく、要はちゃんと救いがあるお話なのです。
現実で言うなら、保護者なのか友達なのか、あるいは何かしらの先生か、そういうサポートをしてくれる人たちの手によって救われたということでしょうか。

この小話では曲の前半部分を切り抜いて、こういう形、結末で苦しみから解放された……という私の勝手な、独自の解釈で引用しております。
そうしてメアリー・スーとなった彼女は「無条件で人から愛される能力」などを得て、少なくとも生前よりかは幸せに生きております。生きてはないけど。

メアリーはいわゆる無表情キャラ(無感情ではない)となっておりますが、
これは生前に、色々あるうちに笑ったり怒ったりすることがなくなってしまい、表情の作り方を忘れてしまったから、という設定だったり。
最後にようやく彼女が笑ったのは……ってね。

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