【小話】闇の一党の慈善事業【ハロウィン】

halloween2016-01

 

きっかけはアレティノだった。子供たちに何かしてやれることはないかと。
そう、彼は言った。

 

halloween2016-02

 

降霜の月の31日、世の中は収穫を祝う祭りで騒がしい。どこの村でも、どこの街でも。農業より商業の色が強いこのリフテンにおいてもそれは例外ではない。
しかし、あまり治安が良いとは言えないこの街で屋外を使った盛大なお祭りはリスク――窃盗や喧嘩など――も多く、結果的にいまは首長が住む宮殿で宴を催す程度の比較的こじんまりとしたものだった。
あるいは、それぞれの家庭の食事が多少、豪華になるくらいか。

 

halloween2016-03

 

一方で、この街の小さな孤児院で暮らす子供たちにとって、この収穫祭というのは大した意味を持たなかった。
理由は単純極まりない。お金がないからだ。
首長邸でのパーティに参加するのにしても、豪勢な食事を囲むにしても。

 

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あの老婆の死後――わたしが殺したのだけれど――孤児院の運営を取り仕切っていたのは当時は助手だったコンスタンスという女性だが、その資金繰りには随分と苦労していたらしい。
行政府から寄越される支援金はごく僅かで、子供たちに最低限の生活をさせるので精一杯だと。
たまの贅沢でさえ許されるような経済状況ではないと、人づてに聞いた。
あとは見返りもなしに、どこの誰とも知らない子供の為にお金を出してくれる聖人を待つばかりだったが、この時勢にそのような人間がでてくるわけはなかった。

 

halloween2016-05

 

そんな状況を彼も知っていたのだろう。
あるとき、かつてこの孤児院の世話になっていたアレティノは言った。こんな日くらい、子供たちの為に何かしてやりたいと。
幾年の月日が流れ、いまとなっては顔見知りなどいないはずだが、やはり強い思い入れがあるらしい。
しかし、わたしはすぐには首を縦に振らなかった。

 

halloween2016-06

 

そんなことをしても、わたし達は善人にはなれない。わたしはそう彼に言った。
わかってる。それでも――と、彼は答えた。それでも、この子達になにかしてやりたいと。
薄暗い部屋のなかで出会ったあの時と同じ瞳のまま”少年”は言った。

 

halloween2016-07

 

この瞳を見るたびに思う。
彼はきっと普通の世界で生きるべきだった人間。真っ当に生き、真っ当な方法で人を助け、救うことができたであろう人間。
そうならなかったのは、わたしがあの老婆を殺し、彼に”きっかけ”を与えたから。それはもはや、アベンタス・アレティノという人間を殺したに等しい罪悪。
その事実にわたしは胸を痛めることはなかった。後悔もなかった。後になってそんな感情を抱くらいなら、最初からしなければよかったのだから。
しかし、であればわたしには責務がある。この真っ暗闇の世界で迷ってしまわないよう、彼を導くという責任がある。

 

halloween2016-08

 

――じゃあ忘れないって約束して。わたしは彼に言った。
わたし達はただの人殺しであること。わたし達の仕事は誰かを救うためのものではないこと。
たったいま終わらせた命があること忘れ、誰かを救った気になってはならないこと。
たとえ”それ”の死を万民が望んでいたのだとしても、”それ”の死を誰かが喜びあなたに感謝しようとも、殺したあなたは悪なのだということ。
たとえどれほどの善行を積もうとも、成した悪行は帳消しにはならないこと。
わたし達は正義ではないこと。わたし達はヒーローにはなれないこと。
これさえ忘れないのなら、あとはあなたの好きにすればいい。

初めてではなかった。
わたしは幾度となく彼にこれを言い聞かせてきた。彼が偽善で自らの悪を隠してしまわないように。
ヒーロー気取りの殺人者を生み出してしまわないように。
それは悪として正しい姿ではないから。

 

halloween2016-09

 

”たくさんの子供達を助けられる”
そういう理想を胸にこの世界に足を踏み入れた彼にとって、わたしが教えた”真実”はとても残酷だったのかもしれない。
しかし、理解しなければならない。すでにその手を血で汚しているのだから。
彼が夢見た暗殺者など、ここには存在しえないのだと。

――わかってる。大丈夫。彼はそう答えた。
本当に? わたしはそう言いたかった。

 

halloween2016-10

 

――じゃあ、いまこのひと時だけは。
子供たちの笑顔の為に。


・ あとがき

ハロウィンらしく楽しい感じしようと思ったらいつのまにかシリアス路線の文章を書いていた。なにを言っているか(ry
はい、というわけで闇の一党、小夜の小話でした。
一応、グレロッドを殺したときから数年後の設定なので、容姿は同じですが子供たちはみんな入れ替わっていると思ってくださいお願いします。

なお、SSないのハロウィン系の小物はMisuzuさん、Crentialさん、YATHcomさん共同制作のStrange Isle by Team MCYから。
お菓子類はElzaさんのMelt in the Mouth - Sweets Resourcesからそれぞれ使わせていただきました。
この場を借りてお礼申し上げます。素敵なMODをありがとうございました!

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